新型コロナウイルスによる肺炎のため昨年3月29日に急逝したタレントの志村けんさん(享年70)。衝撃の死から1年を前に、志村さんの元付き人でタレントの乾(かわ)き亭(てい)げそ太郎さん(50)が、『我(わ)が師・志村けん 僕が「笑いの王様」から学んだこと』(集英社インターナショナル)を出版。間近で見続けた師の「素顔」を伝えている。 げそ太郎さんは芸人を目指して平成6年、志村さんの事務所の門をたたき、運転手・付き人に。以後7年間、「365日、24時間、志村さんに合わせて動く生活で、日常のすべてを見てきました」。 本書は、その日々を振り返り、志村さんのお笑いにかける情熱やネタの誕生秘話、そして、「僕が志村さんから教えられたことは一般の人にもあてはまると思う。それを伝え、誰かの役に立ち、誰かの背中を押せたら」と執筆された。 たとえば、芸人修業のための「自分の時間がない」と付き人卒業を申し出ると、「『時間がない』なんて言い訳。やるヤツはどんな状況でもやる」といわれ、目が覚めたという。 志村さん自身も、<「俺が寝ている間にもっと努力してるヤツがいるかもしれない」>と<どんなに飲んで帰っても、必ず一本は映画を見る>など、「天才といわれるその裏で、こうした努力もされていた」。 一方、<「誰も俺を褒めてくれない」と寂しそうにつぶやいた横顔><お付き合いしている女性とケンカをして、泣いている背中>など家族には見せなかった喜怒哀楽の姿も紹介している。 げそ太郎さんは13年に付き人を卒業後も、志村さんの応援を得て「バカ殿様」の「メガネをかけた家来」役や、舞台「志村魂」にも出演。現在は、故郷・鹿児島のテレビ局リポーターなどで活躍している。 恩師の死から1年、「まだ亡くなった実感がなくて」というが、昨年秋に出会った、耳が不自由な少年が、げそ太郎さんの「アイーン」のポーズに大喜びする姿を見て、ある決意も。「表情や動きだけで音の壁を越えた志村さんのすごさをまた思い知らされた。僕もそういうお笑いをやっていきたい。いつか志村さんに『だいじょうぶだぁ』と言ってもらえるように」(三保谷浩輝)
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