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宝塚月組「桜嵐記」が開幕 珠城りょうと美園さくら両トップ最後の公演 - 神戸新聞

 宝塚月組「桜嵐記」「Dream Chaser(ドリーム・チェイサー)」が15日、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市栄町)で開幕した。一方は動乱の南北朝時代を舞台にした壮大な歴史ドラマ、そしてもう一方がこれぞタカラヅカ王道とうならされるレビュー。本公演を最後に退団するトップコンビ珠城りょうと美園さくらの求心力が見事に示され、珠城からバトンを渡される月城かなとを始めとする組子たちの惜別の思いも伝わる舞台だった。

 「桜嵐記」の舞台は朝廷が京都と吉野に並立し、国中の武士も二手に分かれて争った南北朝時代。南朝側に勝ち目がないことを知りながら父、楠木正成の遺志を継ぎ、正行(珠城)

とその弟正時(鳳月杏)、正儀(月城)は戦いを続ける。そんな中、正行は南朝に仕える女官、弁内侍(美園)と出会う。鎌倉幕府打倒を計画し、幕府御家人だった足利家執事の高師直に処刑された公家、日野俊基を父に持つ彼女は復しゅうをもくろんでいた。

 次第に形勢が悪くなる南朝。戦いに目的はあるのかと公卿たちは正行に憤まんをぶつける。自身も同じ悩みを抱える正行だが、満開の吉野の桜が散るのを前に、師直ら北朝軍が待ち構える四條畷の合戦へと向かう。

 弓を射、剣を振るう正行。その立ち姿が美しい。けがをした敵兵を助け、兵糧を供出する農民への感謝も忘れない。実直で誠意あふれる正行の人物造形に、男役として真摯に舞台と向き合ってきた珠城が重なって見える。

 恨みで心がいっぱいだった弁内侍も、正行との出会いを通じ、解きほぐれていく。悲しい結末しかないと知りつつ、2人の思いが少しずつ歩み寄っていくさまを繊細に演じていた。

 人物の相関関係が複雑なこの歴史物語を、枝葉をそぎ落とすことでシンプルにまとめ、登場人物の心情を際立たせた。作・演出、上田久美子の手腕が光る。

 続くレビュー「Dream~」は、大階段の真ん中に立つ珠城のソロ歌唱から始まる、豪華な幕開き。キャッチーでポップな主題曲は「つかみかけてた/あの日に見た夢…/光あふれる世界/あこがれてたから…」と、珠城と美園の思いを代弁するかのような歌詞で、ちょっと切ない気分にもなる。

 フラメンコではしなうような腕の動き、タンゴの一種ミロンガは足さばきの速さと複雑さ、和楽器を取り入れたロックはド派手に、ラップ調の曲では男役の男前っぷりをと、歌、踊りのバリエーションも豊富で、これぞタカラヅカのレビューといった風格。最終盤、映画「追憶」のテーマ曲をバックに珠城が踊る場面で、観客を、万感の思いあふれる渦の中に巻き込んでいく。

 これだけのメンバーによる、この豪華な舞台が本公演で最後になるのは残念だが、放たれた矢のように加速していくだろう月組のポテンシャルを十分に感じさせる公演となった。

 6月21日まで。東京宝塚劇場では7月10日~8月15日。(片岡達美)

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